あらき歳時記 荻

荻の声1

photo by 侑布子

 

2022年10月9日 樸句会特選句


 荻の声水面に銀の波紋寄せ

                     金森三夢

 ついこの間まで水面は楽しげな水色だった。気づけば秋のひかりに銀色に変わっている。さわさわ荻をゆする風のせいだろうか。秋はこうして澄む水とともにやって来る。もう川波に手足を浸けて戯れる日は来ない。風を聴くだけ。波は溌剌と流れず、ことごとくちぢれるような波紋である。下五をもし「波の寄せ」としたら短歌の尻尾が残った。ひとえに「波紋」で俳諧になった。しかも新古今の美を凝縮して。
                        (選 ・鑑賞   恩田侑布子)

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